『スキップとローファー』(高松美咲)

今更ながら『スキップとローファー』(高松美咲)を読んだ。「石川県のはしっこのほう」から東京の進学校に首席入学した岩倉美津未(いわくら みつみ)とクラスメイトたちとの高校生活を描いた作品。

元子役で学校でも目立つくらいの爽やかイケメン志摩聡介、なんとなくコンプレックスがあってクラスに溶け込みづらかった久留米誠、過去のトラウマから自分に自身が持てず所々素直になれない江頭ミカ、「あらさまな美人」ゆえに恋愛ごとのトラブルに巻き込まれ、中高一貫校からわざわざ受験して入学した村重結月、そして東京でのみつみの保護者で叔母のナオちゃん(作中の言葉を借りれば「生物学上は男」)、を中心に話が繰り広げられる。

1巻ではみつみのドタバタ入学式、学校帰りのおしゃれカフェ、休日にみんなで渋谷などが収録されている。最初はちょっとみつみに対してキツいあたりのミカ、当初は志摩と仲良しなみつみへの嫉妬が原因かと思いきや、そんな単純なものでなく、2巻からのエピソードで彼女がかかえるトラウマ、そこから生まれてしまったコンプレックスが描かれる。


今ではおしゃれな高校生のミカだが、そこに至るまでは努力の道で…と、いうところなのだが、2巻のモノローグ、「とびきりの美人でもなければ 純粋でまっすぐにもなれない 私を一体誰が選ぶ?」は苦しかった。無理せずありのままで人に好かれているみつみへの憧れ、自分への自信の無さがあの態度の裏にあったのね!とわかる。


そして最新話(アフタヌーン2021年6月号)では、長年ミカが抱えていた呪いのようなものがとける…とにかく格好良いよミカ!と言いたくなるエピソードが収録されている。解けて、というより自分で自分を信じて乗り越えた、と言った方が良いかもしれない。


もちろん、この一歩を踏み出した背景にはみつみたちの存在は不可欠、特にナオちゃんはなくてはならないものだったと思う。(夏休みのお泊まり会でナオちゃんと交流を持ったミカは、かなりの信頼を寄せているようで、「ナオさん」と呼んでいる。)


地元を飛び出し東京で成功しているナオちゃん、5巻でそのバックグラウンドが描かれ、淡々とした感じがとても良かった。マイノリティーだった自分が、東京ではやっていけた、かといって故郷を完全には嫌いになれない…というような。閉鎖的な環境への嫌悪と海原が重なって…とにかく見開きが美しかったです。


途中ミカの話ばかりになってしまったが、このようにキャラクター一人一人に丁寧な掘り下げがされており、まだ5巻⁈と思えないくらい一人一人に愛着が湧いてしまう。高校生活をリアルタイムで振り返るような生々しさと、爽やかさが眩しい。


ほかにも志摩の友人で憎めない山田、あー、クラスに一人はいるよね!という感じのモテ方をする迎井、自分にも他人にも厳しい高嶺先輩など、魅力的なキャラクターが多数登場。ひとりひとりに名前があり、顔がない人物がいないよな…と思わせる素敵な作品です。