『女の園の星』(和山やま)

女の園の星』(和山やま)を読んだ。和山先生の女子校を舞台にした作品と聞いて、わくわくして購入。前作の『夢中さ、きみに。』は男の子が多かったので、どんな女の子が描かれるんだろう?先生の美しい筆致で…と期待に胸を膨らませながらページをめくった。

 

女子校に勤務する男性教師・星先生の日常を描いた作品。生徒たちのやりとりや、同僚の小林先生との交流など、学校での出来事を中心に話が進んでいく。

 

マンガ大賞2021でもノミネートされているし、(『カラオケ行こ』もノミネートされている)内容については改めて書くまでもない作品だけれど、やはり、いわゆる「女子校もの」とはちょっと異質な存在だなと思う。その点については、  

「最初は女子校あるあるにしようと思って話を聞いていたのですが、意外と女子校ってテンプレ的なものでもないなと感じました。よく女子校は「女捨ててる」とか「男勝りの子が多い」などと言われていると思うのですが、話を聞いてみると共学とそんなに変わりなく、人によるのかなと。」(「『女の園の星』和山やまが語る、独自の作風が生まれるまで」2020年9月「Real Sound」)

 

とインタビューで答えられていて、作品の中に漂う謎の心地よさはこれだったのか…と感嘆した。なんというか、「女子校」はこうでなければならない、みたいな強迫観念がないというか、思い込みがないというか、追い立てられる感じがしないというか。

同じインタビュー内で「あまり女子校をアピールするつもりはなくて」とも答えられていて、なんというか安心して読める。

 

独特のゆったりまったりした間がおもしろくて、ちょっと『笑う大天使』(川原泉)を思い出す。あれも女子校を舞台にした作品で(あちらは女の子三人が主役でその視点を中心に話が進みますが)きっとロレンス先生から見た史緒たちってこんな感じだったんじゃないかなあと思ってしまう。

 

笑う大天使』もそうだけれど、こちらも生徒たちがのびのびしている。きっと、先生たちからしたらのびのびしすぎなくらいのびのびしている。クラスで犬を飼いだしたり、その犬に「タピオカ」と名付けたり、日誌でイラストしりとりを始めたり…。

各自縛られず自由に日々を過ごしており、一方先生方も干渉しすぎず、生徒は生徒、教師は教師、と距離を保って一線を引いている。この距離感が心地良いなあと思う。

 

作品がおもしろい(読みながら変な声を出してしまった)のはもちろんですが、読み終わった後、なんとも言えないホッとする感じに包まれます。